根底にあるのは「楽しませたい」という思い。人を魅了するビジュアルアーティストへ
こんにちは。LANCER UNIT(ランサーユニット)note編集部です。
ランサーユニットで活躍するクリエイターのインタビュー。今回ご紹介するのは、空間ビジュアルを手がける松坂淳さんです。
インタラクティブコンテンツを中心とするプログラマーから経歴がスタート。独立後の今は、システム構築からビジュアル制作まで行なっています。
松坂さんは会社員時代、デジタルハリウッドへの通学に加えて副業までこなしたバイタリティの持ち主です。その高いモチベーションの背景や、今後フリーランスとして目指している姿など、さまざまな角度からお話を伺いました。
ー まずはご経歴を含めた自己紹介をお願いします
以前はインタラクティブコンテンツのプログラマーとして制作会社で働いていました。独立して2年目になります。
主にVRやAR、MRといったXRコンテンツの制作と、リアル空間の空間演出を行なっています。会社員のときはシステム作りが中心で、副業として画作りや空間作りの仕事を。現在はその両方を行なっています。
この業界に入る前は独学で勉強していましたが、思いきってデジタルハリウッドに入校し、同時に制作会社にもアシスタントとして入社したんです。小さな会社だったこともあって数カ月後には仕事をひとりで任せてもらえるようになり、かなり経験を積ませていただきました。
テレビ番組の生放送で行なうゲームや展示会場にある体験型ゲームなど、インタラクティブコンテンツのシステム作りをメインに、アニメーションやエフェクトを作る仕事もしました。副業で、音楽ライブやVRコンテンツのビジュアルアーティストとしても活動していました。
ー どういったきっかけで独立されたのですか?
もともとやりたかったのはビジュアル作りでしたし、副業が忙しくなってきたのもあって。作った映像をその場で切り替えていくVJとして音楽イベントに参加させていただいた経験も大きかったです。
チームラボさんやWOWさんなど、以前からデジタルアート系の展示会によく足を運んでいて、クリエイター的な視点が養われたのも理由のひとつかもしれません。
抽象的な映像に「主役にするものがないと飽きやすいのでは?」という疑問が浮かんだり、「全体の統一感とメリハリのバランスが絶妙」と思える作品に出会ったり。少しずつ違う観点で見られるようになって、とても勉強になりました。
会社ではあまり空間演出の仕事がなかったので、もっと自分の幅を広げていきたいと思うようになりました。それに、フリーランスのほうがインプットの時間と仕事の時間をフレキシブルに決められる点も魅力でした。
ー 対応できる領域のなかで、最も自信があるのはどんなことでしょうか?
難しいのですが、ひとことで言うと「テクニカルアーティスト」の領域だと思っています。ビジュアルを作りながらシステムも理解しているのは僕の強みです。
プログラマーが良いと思った実装でも、色や動きすべてのパラメーターを外部調整できるようにしてしまうと、逆にアーティストにとって使いづらいこともあります。固定する部分と外部調整できる部分をどう切り分けるかの判断は、どちらも理解していないと難しいと思うんです。
でも、今後はもっとビジュアルアーティストの仕事を増やしていきたいと思っています。
ー お仕事はどのようなルートで得ていますか?
副業でやっていた頃から今も、知り合いからお話をいただくことが多いですね。昔から積極的にいろいろな人と交流したり何かのプロジェクトに関わったりしていましたので、声をかけてもらう機会が多くて。一緒に仕事をした方からのご紹介で関係が広がっているので、とても感謝しています。
最近では普通になってきたSNSでの募集もよく見ています。『えんとつ町のプペル』のVR開発に関わらせていただいたのも、SNSがきっかけでした。作品名はなく「絵本のVRプロジェクト」とだけ公表されていたのですが、楽しそうな仕事だなと思って応募しました。
ー 今のお仕事をするなかで、いちばん楽しいことは何ですか?
自分のなかで「これ」というこだわりを表現するときです。ユーザーのリアクションを想像しながら制作するのは楽しいですね。「人を楽しませたい」という気持ちが根底にあります。
『えんとつ町のプペル』VRで女の子が風船を離してしまうシーンがありました。最終的な編集でカットされてしまったんですが(笑)
現実では風船を離したらそのまま飛んでいってしまいますけど、VRの場合はどこかで消さなければなりません。このシーンの主役は風船ではないのでいつまでも漂っていると違和感がありますし、風船をずっと見ている人がいたら急に消えるとちょっと冷めてしまう。なので自然に消える様子にこだわりました。
クライアントチェックで「感動した」と言ってくださったスタッフの方がいたらしく、本当にうれしかったですね。こだわったところは必ず見てくれる人がいるんだな、と。
そういう細かいところって不必要な場合があるかもしれません。でも、ユーザーの心情を踏まえて丁寧に作ることで、より世界観に没入できるんじゃないかなと思うんです。そんなところも大切にしているポイントです。
ー 「人を楽しませたい」という思いは昔から?
子どもの頃は両親を驚かせるのが好きでしたね。親が帰ってきたときに家中が装飾されていた、なんてこともやっていました(笑)
学生時代も交流会や新入生歓迎会などをよく企画していました。参加者がどんなことを知りたいか、どうしたら楽しめるかを考えながら進めます。実際に参加した方が楽しんでいる姿を見るとうれしい気持ちになりましたね。
今の仕事も同じで、ユーザーがどうしたら楽しめるのかをいつも考えます。クライアントの要望には明確になっていない部分もありますから、気持ちを汲んだうえでこちらから提案します。それを先方とブラッシュアップしていく過程も、一緒に作り上げている実感が持てて充実感があります。
ー スキルアップのために行なっていることはありますか?
自分がしたい表現のための技術的な勉強は常にしていて、それが結果的にインプットの作業になっていると感じます。
僕は光の表現がとても好きで、最近プリズムやゴッドレイの表現を磨くためにシェーダーの勉強をしていました。個人的なアートワークのつもりでしたが、折よく仕事でそのオーダーをいただいたんです。すごくきれいだと喜んでくださって、結果につながりました。
この他にも3DCGのモデリング・アニメーションなどを行なうDCCツール、リアルタイムレンダリングを行なうオーサリングツール相互間の知識など、自分が気になって覚えたことが仕事に直結することはよくあります。スキルアップのためというより、したい表現や知識を身につけた結果がスキルアップにつながっているというイメージが近いかもしれません。
ー お仕事をするうえで心がけていることは何ですか?
クライアントが「本当に求めていること」を確認するためにできるだけ意思疎通をはかっています。文章では伝わりづらいですし、会話をしても言葉の行き違いってありますよね。それにクライアント自身、イメージが具体的になっていないことも多いですから。
ご要望されている理由をきちんと理解すると、まったく別の指示だと思っていたことがひとつの考えから発生していると気づくこともあります。イメージの具体化によって明確なゴールが見えてくるので、作業時間の確保にもなりますよね。
より良い結果のためにイメージの解像度を一緒に上げていこう、そんな意識を持つようにしています。
ー ランサーユニット経由で印象的なお仕事は?
昨年(2021年)11月の『HoloLens(ホロレンズ)』を使ったMRの案件でしょうか。ホロレンズは現実空間に配置された3Dオブジェクトを操作できるデバイスです。具体的にはアポロの月面着陸のアニメーション制作から物理シミュレーション、ホロレンズのための形式やモデルに変換する、という仕事でした。
まるっとひとりで請け負う場合、ただビジュアルを作るだけではなく、最終的な納品物として完成するために多様なスキルが求められます。例えば旗を振るシーンでは物理的にどう動くかを計算するクロスシミュレーションを行ないますが、そのままのデータでは重くてリアルタイム向きでなかったり、ファイル形式が対応していなかったりするので、適正な形式に変換する知識も必要です。
この案件では作業フローから提案して実装できたので、自信にもつながりました。
ー ランサーユニットの魅力はどこに感じますか?
間に入ってくださることは大きいと思います。もちろんフリーランスである以上すべてを自分ひとりで行なわなくてはいけませんが、プロジェクト開始時のやり取りをサポートしていただけるので円滑に進めやすいですね。
一度クライアントから発注書がなかなか送られてこないことがありまして。すでに作業に取りかかっていたんですけど、本来は発注書が届いてから動くのが基本だと思います。そのときランサーユニットに相談して伝えていただきました。まだ信頼関係ができあがっていない状態だと直接聞きにくいことってありますよね。
相談できる環境があること自体、ありがたいです。特にフリーランスになったばかりの人にとっては大きいと思いますよ。僕が初めて副業で仕事をしたとき、どう進めていくべきか、どう判断すべきか、迷うことがたくさんありました。クライアントのことを把握している方に相談できるのは非常に安心感があると思います。
ー ランサーユニットの導入を考えている企業さまにメッセージをお願いできますか
クオリティアップのためには、負担を少しでも減らすことも重要だと思います。そういった点でもランサーユニットはおすすめですね。
映像制作、XRコンテンツ、空間演出、どれを取っても、実制作ではさまざまなスキルや役割が求められます。企業間の依頼だと、制作側の不足したスキルを補うため、さらに別の企業に発注することがよくあるんです。分業化は良いと思いますが、意識共有のために余計な時間やコストを生んでしまう可能性も高いです。
ランサーユニットでは、マルチスキルを持ったクリエイターが直接対応できます。スムーズにやり取りできて、コストも抑えられる。クオリティアップにもつながります。まずは気軽にご相談いただきたいですね。
ー 最後に、松坂さんのこれからの展望をお聞かせください
人を魅了するライブ演出やファッションショー、またはお花見のように心やすらぐ空間、そんな空間演出に関わる仕事をしていきたいです。
今注力しているのは、自分のイメージや依頼されるビジュアルに対しての表現力を磨くことですので、画作りを含めた魅力ある空間を演出するアーティストの仕事を増やしたいですね。
さらに、海外の仕事もしたいと。実は近々カナダのモントリオールへ行くつもりなんです。日本にいても海外の仕事はできますが、英語力が重要になりますよね。その語学修得のためもありますし、純粋に国によって異なるアートという文化を体感したい思いもあります。
現地で英語の勉強をしつつ、フリーランスの仕事もしていきたいです。リモート化が進んだことで海外にいながら今の仕事も続けられると思いますし、今後は日本と海外の仕事をともにやっていきたいと考えています。
取材・文/BBQ-john.inc 篠田由美子