企業とクリエイターが同じ目線で課題を解決。継続的な関係の架け橋に
こんにちは。LANCER UNIT(ランサーユニット)note編集部です。
プロのクリエイターを複数人選し継続的にクリエイティブ制作を発注できるランサーユニット。新たなシリーズとして、運営しているスタッフのインタビューをお届けします。
初回は、デジタルハリウッド株式会社 xWORKS事業部マネージャーの川村登さんです。
ランサーユニット誕生から約2年。
立ち上げた背景から、現在のフリーランスを取り巻く環境、今の企業が抱えている問題点まで、マネージャーである川村さんにリアルなお話を伺いました。
ー 川村さんのランサーユニットでの役割を教えてください
xWORKS事業部はデジタルハリウッド卒業生のマッチング事業をしている部署で、ランサーユニットはその一部として生まれました。僕はその立ち上げメンバーのひとりです。
基本的にはランサーユニットの利用導入促進営業をしています。
マネージャーと言っても現場の仕事も多いですね。またスタートして間もないですし、いろいろと方向性を判断する場面もよくあるので、とにかくすべての会議にも出ています(笑)
ー ランサーユニット発足にはどのような背景があったのですか?
もともとは法人事業部だったんです。アライアンス事業というか、「人が足りないのでサポートしてほしい」といった相談に対応していました。
僕たちも制作経験者ですから、向き不向きを踏まえて適任のクリエイターをアサインすることは得意としていたんです。
そういった請負事業をするなかで、企業が自社でクリエイターを抱えながら事業拡大していくより、状況に応じてクリエイターを選定していくほうが重要なのでは?という思いが強くなっていきました。
WebやSNSの広がりによって、従来型の多重請負構造から、フリーランスを中心としたダイレクトな請負構造への変化を肌で感じましたし、クリエイティブな仕事の細分化が進んでいることもありましたね。
デジタルハリウッドには社会人経験をバックボーンに持つ多様性あふれるクリエイターが多く、その数は9万人規模を誇ります。単純にスキルの高さだけではなく、その多様性の部分も含めてマッチングできたらおもしろいと思いました。
そして最重要なのはマッチング部分。そこに注力するために月額運用型のビジネスモデルを構築しました。
ー ランサーユニットの仕組みを、分かりやすくご説明いただけますか?
ひとことで言うと「クリエイターユニット組成サービス」だと思っています。
ポジショニングとしては、派遣・常駐とクラウドソーシングの間。一人にひとつの業務をお願いする「制作・遂行」のかたちではなく、ある程度の業務量に対して、得意な領域のクリエイターを手配し「複数人=解決」するサービスです。
正社員、派遣、クラウドソーシング、どれも一長一短のリスクがあります。正社員は雇用するリスク。派遣はある固定の業務で一定期間お願いしなければならないリスク。クラウドソーシングは都度発注ですが、労使などが適切かどうかを自社で判断するリスク。
事業はゴールに向かいながら、時代が移り変わるなかでさまざまな施策を打つ必要があります。プロジェクトベースで、必要なときに必要な人を僕たちが供給できたら…というのが起点です。
ー 他のクラウドソーシングサービスとの違い、ランサーユニットの強みはなんでしょうか?
ランサーユニットでは、間に入っている僕たちがしっかりヒアリングをし、最適なクリエイターをご提案します。
企業が自分なりのフィルターで探して、そのままの視点でクリエイターに相談した場合、話がかみ合わないことが多いと感じていて。
いったん僕たちが企業の希望を受けて、予算面から必要なクリエイターまで、すべて整理してからジョブディスクリプション的なものをまとめます。そうすることで、クリエイター側も受け止めやすくなるんですよね。
すべての課題を解決してくれる万能のクリエイターが一人いるのならそれに越したことはありませんが、大抵の場合そうではありません。
3人寄れば文殊の知恵ではないですが、例えば3人のメンバーを組み合わせれば、単純に3倍ではなくそれ以上の力を発揮できるはずです。
僕たちは、クリエイターと面談をしてそれぞれの得意なこと、内面的な志向性などを把握しています。それを加味しながら、企業の課題に対して最大限の結果が得られるように調整をします。
要件をかみ砕いて、最適なメンバーを組成する。それがランサーユニットとしてできている大きな価値提供だと思っています。
ー 最適なメンバーを組成することで、可能性が何倍にもなるということですね
企業が安心して事業推進できる環境作りにも寄与できていると思っています。
例えば、事業を拡大していくとき、良い仕事をしてくれる人がずっと伴奏することって大切じゃないですか。営業サイドで取ってくる仕事が増えていっても、制作するクリエイターがその都度変わってしまうとクオリティが保てませんよね。
クオリティだけでなく、できれば同じようなフローで、同じ料金感で進めたいはずです。それに今の時代、一度で成果が出ることはないですし。SNS然り、Webサイト然り、作って終わりではなく運用していかないといけません。
良いクリエイターと良好な関係を保って、長い目でお互いゴールの目線を合わせることが重要です。
1からクリエイターや外注先を探すとなるとコストもかかります。
ランサーユニットなら、デジタルハリウッドという安定したベーススキルのなかから近しいスキルや働き方のクリエイターを呼び込むこともできます。
ましてや、クリエイター側もフリーランスだったら収入を安定させたい気持ちがありますよね。
だからこそ、単発の案件紹介ではなく、月額運用という仕組みとして長期的な関係構築のサービスにしています。企業にとってもクリエイターにとってもお互いにメリットがあると思っています。
ー ありがとうございます。
春に武井壮さんを起用して公式サイトをリニューアルしましたが、反響はいかがでしたか?
広告効果としては、以前の4倍以上になりました。オーガニック検索数が圧倒的に増えたことから、認知度がかなり上がったと思っています。
今後はもっとランサーユニットの内容やメリットなどを伝えていきたいと考えています。
クリエイター個々のスキルをはじめ、特性、多様性、魅力など、企業が導入しやすいかたちとして表現することで、ランサーユニットの良さをもっと広めていきたいです。
さらに、「フリーランスを求めている」ITやスタートアップ企業だけではなく、社内でどうしていいか分からない部分を抱えている一般企業にアプローチしたいですね。
ランサーユニットと組んで仕事を進めれば企業もプロモーションスキルが上がりますし、そのナレッジが積まれていくのも付加価値のひとつです。
専門の視点を持ったフリーランスを採用したら企業にさまざまな利点がある、そこをもっと啓蒙しなければ、と思っています。
ー 時代の変化が企業とフリーランスの関係にどう影響していると思いますか?
今までは代理店や制作プロダクションなどが制作窓口として存在していて、企業側にクリエイターがいることはなかったと思うんです。
企業の販促部やマーケティング部から、まずはお付き合いのある代理店に依頼して、そこから下請けの制作会社、さらに孫請けのフリーランスへとつながっていく多重構造で。
クリエイティブ業界には派閥があって、あるグループに属しているから選ばれる、ある制作会社にコネがあるなど、ムラ社会のような文化があります。僕自身、20年ほど前までその構造のなかにいたんですよね。
先ほども少し触れましたが、近年SNSが普及したことでクリエイター自らが発信できる世の中になりました。
企業の担当者がデザイナーやイラストレーターに直接DMを送る動線ができて、活躍できるクリエイターの裾野が広がったと思います。さらに、「働き方改革」によって副業を認める企業が増え、クリエイターの数自体も増加しています。
そういったことから、代理店に丸投げではなく、企業側でアイディアを出して直接外部パートナーに委託するという流れができてきました。
一方で「個人に任せて大丈夫なのか?」という不安や「とりあえず今まで通り代理店に」という風潮はまだまだ拭えきれていません。
でも今後は、そういった牙城が徐々に崩れていくのではないでしょうか。
もちろんテレビCMやイベント開催など、代理店にしかできない仕事もあるので、分業化が進むのではないかと考えています。
ー 副業の広がりによってフリーランサーは増加傾向にありますが、同時に制作料の低価格化が進んでいるように感じます
そうですね。信じられない価格の案件も見受けられます。
伸びているクラウドソーシングサービスにはたくさんの案件がありますし、駆け出しのクリエイターが実績作りに利用するのは悪いことではないとも思います。でもそれは自分のスキルを消費しているだけで、本質的でないことが多い気がします。
プロのクリエイターにしかできないことってありますよ。分かりやすく言うと「効果」を出せること。
先ほど言った「社内でどうしていいか分からない部分を抱えている企業」などは、例えば新商品を発売するときに「LPを打ち出そう」という発想が浮かばないわけです。
そこで、クリエイター側から「Webサイトに商品情報を掲載して、バナーとLPを使った広告を打ちましょう」という提案をしていけば、クリエイターの価値が上がると思うんです。
もちろんランサーユニットは初期段階で要件をかみ砕いてクリエイターとつなぎますし、継続していくために潤滑油的な役割も果たしますが、そういった価値提供をクリエイター自らが与えていく必要性も感じます。
「この人に任せたい」「この人と一緒に仕事をすれば成果が得られる」そう思ってもらえれば、その都度どういうレベルの仕事をするのか分からないクリエイターに低価格で発注しようとは考えないですよね。
クリエイターが自分の価値を高めていくのも、これからは必要なことだと思っています。
ー なるほど。
最近は「働く場所」もフラットになっていますが、地方のクリエイターについてはいかがですか?
デジタルハリウッドは全国37拠点(2022年8月現在)にあり、北海道から九州まで、地方にも本当に優秀なクリエイターがたくさんいるので、要件が合えばどんどんご紹介しています。
東京でバリバリ良い仕事をしていてUターンした人もいますし、地方にいるクオリティの高いクリエイターとのマッチングができているのもランサーユニットの強みだと思っています。
ただ、まだまだ難しい場合もあって。問題は「リモートの壁」です。
撮影のように物理的な仕事を含む場合でなければ、リモート対応でまったく問題ないと思っていますが、そこをネックに考える企業はまだ多いです。
「オリエンだけは対面でお願いしたい」といった希望が根強くあります。オンライン面談でも、よほど画質や音質が悪くない限り「人柄」「人となり」は分かると思うのですが。
また、デジタルハリウッドにある『Webデザイナー専攻 主婦・ママクラス』には、すごく優秀な人が多いんです。子どものお迎えなどで夕方の時間帯に制約があるだけなんですが、その点がNGになることもあります。
夕方4時〜6時の間にレスポンスがないだけで、優秀なクリエイターを採用しないのはもったいない。なかには朝5時から仕事をして、夕方は抜けますが夜9時にまたアクティブになる人もいます。普通の人よりすごいですけどね(笑)
地方に目を向け、時間の制限を取り払えば、よりマッチする優秀な人がいます。リモート対応や時間に対しての偏見がなくなればもっと良いクリエイターと仕事ができる、ということも知ってほしいです。
ー これから先、ランサーユニットが考えていることを教えてください
「地方創生」にランサーユニットがひと役買いたいと考えています。
移住による家賃補助や税金免除などの助成制度はよくありますよね。もちろんメリットですし、助かります。
でも僕が移住する立場だったら、もっと事業に対するサポートがほしい。
あまり環境が整備されていない印象を持っていて。
例えばレーザープリンターが用意されているとか、ネット環境が整っているとか、コワーキングスペースが使えるとか。おもしろいところで言うと、地元のイラストレーターさんに似顔絵を描いてもらえるとか。
そういった環境があれば移住して事業をはじめやすいと思うんです。
ランサーユニットには、まだ実績を積み上げている段階のクリエイターがたくさんいます。そういう人たちを地方行政の移住促進チームとして導入してもらえたらと。
スタートアップ企業の社長さんが地方に移住して事業をスタートさせるとき、必要なものは山ほどありますよね。Webサイト、名刺、チラシ、イベントを打とうと思ったらブースを作ることも。
そこで移住先の行政のランサーユニットが対応できれば、やりたいことをスムーズに進められるはずです。
移住者だけでなく、地元企業のサポートもできます。企業だけでなく、商店街の花屋さんや八百屋さんやカフェなど、小さな個人事業を含めたらいくらでもありますよね。その事業をランサーユニットがバックアップできます。
「SNSでどう発信すればいいのか…」という場合はライターが代行して情報発信を増やせますし、デザイナーがECサイトを作ることもできます。
そうすることで売上げが伸びたり、SNSを見て移住する人が増えたりすると思うんです。「○○市って、サポートがあって事業をはじめやすいよね」という話が広がっていけば、まさに地方創生につながりますよね。
ー 最後に、締めのひとことをお願いします!
僕が伝えたいことをまとめますね。大きく分けて3つです。
1つめは、地方も都市も関係なく、制作業界のムラ社会ではなく誰もが日の目を見ることのできる文化になってほしい。誰かのお気に入りだとか、業界の長さなどに関係のないプラットホームを確立したいです。
企業がやりたいことに対して最適なクリエイターが選択される、フラットな状態を目指したいと思っています。
2つめに、クリエイターが部分的に低価格で請け負う「消費される多重下請け構造」ではなく、まっとうに同じ目線で課題解決できる環境。すべてのクリエイターが縦ではなく並列になった世界になってほしいですね。
最後に、企業とフリーランスがお互いを信頼して応援し合う関係値の構築、長い目で伴走できる状況です。
僕がランサーユニットをはじめたのは、この3つを実現したいという思いからです。企業も、クリエイターも、お互いのことをいつも気にかけている。そんな状態になってほしいと願っています。
いかがでしたでしょうか。
立ち上げメンバーである川村さんのお話で、ランサーユニットが目指している世界観や思いが感じられたと思います。
もし、新しいことにチャレンジしたくても踏み出せない企業さまがいらっしゃったら、ランサーユニットにぜひご相談ください!
やりたいことが明確でなくても、しっかり受け止めて最適なご提案をさせていただきます。
取材・文/BBQ-john.inc 篠田由美子