【開催レポート】ポートフォリオゆるっと座談会|クリエイターが知るべき採用と不採用の分かれ道
2022年11月に発足された「ランサーユニットコミュニティ」。ランサーユニットに登録しているクリエイターやデジタルハリウッドの社員、講師が集い互いに学びや交流を深めるコミュニティで、これまでに160名以上の方が参加しています(2023年1月19日現在)。
12月21日、コミュニティ内の限定イベントが初めて開催されました。記念すべき初回のタイトルは「ポートフォリオゆるっと座談会」。すべてのクリエイターにとって避けては通れないポートフォリオをテーマに掲げ、主に企業の視点からクリエイターの採用基準を本音でお伝えしていく内容です。
ここまで正直に採用側の意見が飛び交う場はあまり無いかもしれません。非公開イベントではありますが当日の内容の一部を特別公開しますので、ぜひクリエイターの皆様は活動のヒントにしていただければと思います。
1. イベント概要
登壇者は、普段ポートフォリオを数多く目にしながら企業とクリエイターをつなげているランサーユニット社員の川村と松田、そして会社員時代から独立後まで長年クリエイターの採用に携わっている西口明典さんの3名です。
文字通り「ゆるっと」した会話ではありながら、その中身には現実を突きつけるシビアな鋭さがありました。
「採用されるポートフォリオの特徴」「採用されないポートフォリオの特徴」など、9つのテーマに沿ってトークを展開。これから仕事を獲得していきたい全てのクリエイターが知るべき内容となっています。
2. 座談会の内容を一部公開!
採用されるポートフォリオの特徴は? - 自分をタグ付けせよ!
川村:
2年ほど企業の方とやりとりをしていて強く感じることは、ポートフォリオの内容以前のコミュニケーションの重要性です。具体的には、登録フォームの記入内容などで「いかにご自身に関する情報量を増やせるか」がポイントだと思っています。
ランサーユニットの場合、全員のポートフォリオを先に開いてチェックするわけではありません。「どういう人なのかな?」と想像しながらテキストを読み、そこから作品を見ていきますので、事前の情報は超重要です。
だからこそタグ付けのようにご自身を表すキーワードを数多く提示することが大切。たとえば出身校、趣味、住んでいる場所が一緒であるとか、そういった共通点が同胞性を生んで興味を持つきっかけになることも多いですね。SEO的な観点で、どれだけ情報を詰め込むことができるか。それがポートフォリオまで進んでもらうための前提であると感じます。
西口さん(以下、西口):
プロフィールを詳細に書かないのは損ですよね。この人いいかも!と思える情報を詰め込んでおきましょう。「バレーボールやってました」とかでもいいと思います。
ぱっと見の文字数の少なさは目立ってしまいますから、書かれている項目に対して精いっぱい言語化して書くという努力はするべきだと思います。「ポートフォリオのスキルだけ見てください」という人は、いくらスキルが高くても目立ちづらいかもしれません。
川村:
仕事のスキルの部分でも、たとえば映像系であれば、撮影ができてこういう機材を持っているとか、YouTube動画の編集とナレーションができるとか、詳細に記載していただくとキーワードに目が止まって採用につながりやすくなるということはあります。
その他、クライアントが特に知りたい情報情報(稼働時間、作業単価、オンリーワンの強みなど)は、ランサーユニットのクリエイター登録フォームにあらかじめ組み込んであります。これらは企業の方によく見られている項目ですので、十分な情報量で記入することをおすすめします。
公開できない作品はどう扱う? - テキストだけでも記載を!
川村:
作品自体を公開できない場合、企業名や作品内容、具体的な成果などを、テキストで記載していただくことをおすすめします。「大手の案件やっていました」と伝えるだけではもったいないです。
とはいえ作品を公開できるのであれば、それに越したことはありません。作品公開の可否を企業に確認する時もコツがあるんです。いきなり「この前の作品公開してもいいですか?」と聞いてしまうのはちょっと雑かもしれません。「ポートフォリオサイトのこの位置に配置したいです。IDPASSが設定されていて、パスワードは3ヶ月に一度更新しています」など具体的に提示すると、社内での承認を得やすくなると思います。
それでも公開NGと言われてしまうことも多いので、その場合はテキストで保管するのが良いと思っています。このあたりはポートフォリオをお見せする企業の価値観によっても変わってきますから、ケースバイケースで検討してみてください。
最適なボリューム感や仕様とは? - 企業ごとにアレンジしよう
西口:
やはり数が大事です。最初に目次をつけて何がどこにあるのかを示せば、多い分には問題ありません。私の場合、グラフィックデザインの作品を集めてPDFでまとめているのですが、全部で100ページくらいあるんです。毎回100ページ提出するのではなく、クライアントのニーズに応じて作品をセレクトして40くらいに絞ることも。それができるのは、やはり数があるからです。
ポートフォリオは量か質か、と問われたら、私は「量」だと思います。いくら質が高くても、3ページだけでは採用につながりにくいのが現実です。ある程度の数がないと得意、不得意も判断できません。これだけの数をこなしているんだということを想起させられる物量感になっているか、事前に確認されることをおすすめします。
松田:
クライアントに応じて、その都度ポートフォリオを作ってる人は強いです。たとえば、バナーのクリエイターを探している企業であればバナーを強調して前の方に出すなど、企業のニーズに合わせてアレンジしている人は採用されやすい傾向があると感じます。企業のことを考えていて提案力もあるという良い印象につながるのでしょう。
掲載できる作品が少ない時は? - 作品ごとに○○○を書く!
西口:
掲載できる作品数が少ない場合は、一つの作品に対してコンセプト、プロセスや成果を展開させることでページ数を増やすと良いでしょう。数は少ないなりに、アピールできる方法はきっとあるはずです。
川村:
作品ごとの金額の目安を載せるのもありかもしれません。実際に受注した金額ではなく、このボリュームと制作期間でどのくらいの金額がかかるのかという概算を示すと、発注する企業にとってイメージを掴みやすく採用につながる可能性もあります。
Webと紙の棲み分けは? - 受け手を想像して使い分けよう
西口:
状況によってWebと紙を使い分けています。オンライン通話でプレゼンする時は、紙のポートフォリオでは読みづらいので、データで見せられる状態に変えています。
私が心がけていることは、プレゼン後に参考URLをまとめたページを共有することです。クライアントは自分一人では判断せずに何人かの承認を得ないと採用につながらないので、そのフローをサポートできるような仕様になっているかは結構大事だと思います。ポートフォリオが後から複数人で回覧されるような体裁になっているか。これはぜひ確認していただけたらと思います。
一番印象に残っているポートフォリオとは? - 演出が大事!
川村:
Notionで作られているポートフォリオが印象に残ります。オリジナルのWebサイトだと迷ってしまって探しづらいことが多く、その点Notionは見やすくて好印象です。
西口:
一つ強烈なインパクトを残したポートフォリオがあります。対面でお会いした女性だったのですが、面接の場で「ちょっといいですか?」と立ち上がって、何かと思ったらいきなり割烹着に着替え始めたのです(笑)
彼女はテーブルクロスを引いて一枚ずつ作品を乗せ、フルコースのような仕立てで作品を一つ一つ紹介していきました。そこまで見せ方を演出されたらもう一歩リードです。作品のクオリティも高かったので、その方は採用につながりました。
採用されないポートフォリオは? - データの送り方に要注意
松田:
残念なのは、作品データをメールで送信される方です。特に映像系の方の中には大容量データ送信サービス等を使って共有される方も多いのですが、それではダウンロード期限が切れてしまったり、受信側のデータを圧迫したりしてスムーズではありません。ご自身のサーバーやYouTubeなどのプラットフォームにアップするなど対策していただきたいですね。
西口:
そこを配慮できるかどうかということは、思いっきり採用のポイントだと思います。クリエイターは相手ありきの仕事ですから、相手のことを考えられるかどうかが極めて重要な判断材料になります。
参加者からの質問 :「いま需要があるのはどの分野ですか?」
川村:
UIUXデザイナーが欲しいという声はよく聞きます。専門家はなくても「UIUXを勉強していました」ということはアピールできるかもしれないですね。
どの分野においても「提案できる人」は求められています。クライアントの中にも、課題はあるけれど忙しくて手が回っておらず、ゼロベースで相談したいという企業の方が多いです。言われたことに対応するだけでなく、どうやったら課題を解決して成果を出せるのかということを考えて行動できることが企業に求められる人の特徴ではないでしょうか。
西口:
ランサーズが公開した面白いデータがあります。コロナ前後の「フリーランス市場の需要トレンド」を表すランキングなのですが、このデータによるとデザイナーの需要があまり増えていないことがわかります。
デザインができる人は多いので、何か別のものと掛け合わせて希少価値を出すことが重要ではないでしょうか。コピーライティングができるデザイナー、アパレルに強いデザイナーなど、自分自身をタグ付けしていくことをおすすめします。
本当は自分らしさをみんなが持っているのに、心に秘めたまま表現できていない人がとても多いです。採用される人は、うまく自分を表現できているだけかもしれません。
結局のところ、ポートフォリオは基本的なコミュニケーション力が見られているということです。相手の状況を想像し、気持ちに配慮しながら、いかに自分らしさを表現していけるか。作品一つ一つのクオリティ以上に努力すべきことがあります。ぜひ皆さんも挑戦してみてください。
3.ランサーユニットのクリエイター登録はこちら
今回はポートフォリオの作り方のポイントについて採用側の視点をお伝えしました。新しい学びや気づきはありましたでしょうか?
今回の座談会に限らず、コミュニティの開設をきっかけにクリエイター同士で学び合える機会が増えています。今後もさまざまなテーマで座談会や勉強会を開催していく予定ですので、ご興味をお持ちのデジタルハリウッド在校生・卒業生の方は、ぜひ下記よりランサーユニットにご登録ください。