【開催レポート】女性デザイナー座談会|自分らしく毎日を楽しむ、しなやかなキャリアの作り方
2022年11月に発足された、ランサーユニットコミュニティ。ランサーユニットに登録するクリエイターやデジタルハリウッドの講師などが集まるコミュニティで、210名以上の方が参加しています(2023年4月4日現在)。これまでに勉強会やオフ会を開催し、交流や学びを深めてきました。
そして3月3日、初の女性限定イベントがコミュニティ内で開催されました。この日は桃の節句ということで、ゲストはランサーユニットで活躍中の女性クリエイター2名。キャリアデザインについて女性同士でざっくばらんに語るトークセッションをお送りしました。
コミュニティ限定のイベントではありますが、特別に当日の内容を一部公開しますので、キャリアについて悩みがある女性の方は参考にしてください。ランサーユニット登録とコミュニティ参加もお待ちしております!
イベント概要
同じ女性デザイナーであるランサーユニット事務局・森 瑞晶の進行によってトークセッションはスタート。ゲストのお二人それぞれのキャリアについて詳しくお話しいただきました。
キャリア選択のリアル ー小松鮎奈さんの場合
小松さん:
デザイナーの小松と申します。グラフィックとWebのデザインをメインに、フリーランスとして都内を拠点に活動しております。デザイナーとしては13年目、フリーランスになって4年目を迎えたところです。
趣味について
趣味は競馬、お酒、ゲーム、ジム、料理、海外ドラマなど、たくさんあります。基本的に何でもはまりやすいタイプの人間なので、常に何か楽しいことないかなと探していますので、皆さんもぜひおすすめを教えてください。
いわゆるゆとり世代で、マイペースに生きてきました。ゆるっとした形でデザイン業に足を踏み入れてしまったものの、自分なりに頑張って独立し、順調に活動することができています。「こんな人もいるんだな」と耳を傾けていただけたら嬉しいです。
お仕事について
もともと飲食系の事業会社でグラフィックデザイナーを務め、その後に独立しています。ですので飲食やアパレルなどのBtoCビジネスのお仕事が多いですね。強みは、飲食に関しては撮影やディレクションもできること、それからグラフィックとWebの両方のデザインができることです。
割合は、Webとグラフィックが6:4くらいです。「グラフィックの案件って少ないんじゃないの?」と聞かれますが、むしろ増えている印象がありますね。新しいツールも続々と登場する中で、手に取れるものをデザインできるスキルは、実はかなり貴重なんじゃないかなと最近考えたりしています。
主なお取引先は10社ほどで、その中の3社はランサーユニットからの紹介です。会社員時代の人脈など横のつながりでお仕事が広がっていくことが多いですね。また残り10%は「作るお仕事」ではなく、今日のように「人にお伝えしていくお仕事」の比重も少しずつ増えてきています。
働き方について
日々の働き方は、90%は在宅、残りの10%が外出して撮影とか講師業などを行っています。全く外に出ない日も結構ありますね。稼働は平日の10時から19時が理想なんですが、連絡が落ち着いた夜の10時以降ぐらいが実は自分なりのゴールデンタイムだったりします。
オンラインで仕事が完結する時代になり、いろいろな地域の方とお仕事する機会が増えていきました。東京を拠点としながら、たまに出張で地方に行く。このような働き方で活動しています。
これまでのキャリア
私自身は会社員を二回ほど転職して、その後に独立しています。その中で「あれは転機だったな」と思える時期が3回くらいありました。
転機1:デザインの楽しさに目覚めた「就職」
一つ目の転機は、最初の就職です。美術系の学校を卒業した後、無職の期間もありながら、未経験OKのインハウスデザイナーを見つけて食物販店を運営する企業に入社することができました。ここでは先輩が一からデザインのスキルを教えてくださり、仕事の面白さに目覚めた時期でしたね。
ただ案件のジャンルの幅の狭さに物足りなさも感じていました。そのためダブルワークで芸能関係の個人事務所でも働くことを決意。グッズやポスター制作に携わり、昼も夜もがっつりとデザインに費やしたこの時期は、体力面や技術面でグッと伸びた時期だったと思っています。
転機2:大きなやりがいを感じた「転職」
その後、もっと大きな規模の会社で成果を出したいと考えて転職しました。デザインだけでなくプロモーションなどを幅広く担当。PDCAを回して結果を出すことに喜びを感じました。
新規事業にも携わり、ゼロからブランドを立ち上げて育てることに大きなやりがいを感じました。この時の経験が今の自分の仕事のベースになっていると感じています。
その後、もう一度転職した先の会社で業務範囲をグラフィックからWebにも広げ、EC事業の立ち上げに携わったことがWeb業界に興味を持つきっかけになりました。
転機3:働き方を根本から見直した「結婚」
三つ目の転機が結婚です。会社員は楽しくてやりがいもありましたが、すごく忙しかったんです。当時は残業もあり、なかなかハードな環境でしたね。
20代後半を迎えて結婚したことで、家庭と仕事のバランスを考えるようになりました。長くデザイナーとして活動していくためには働き方を見直す必要があると考えて、独立を決意。家族からの応援や、お仕事をいただけそうな横のつながりがあったことも独立の後押しになりました。
独立にあたってWebを業務範囲に含めたかったので、デジタルハリウッドに入学して知識と技術を学びました。それをきっかけとして、ランサーユニットをはじめ多くの方々とつながれたことも現在のフリーランス活動に生きています。
大切にしていること
フリーランスにとって大切なのは「自分を守ること」だと実感しています。何かがあっても他に変わってくれる人もいません。休むべき時は休む、必要な力を借りる、月1のメンテナンスで整体に行くなど、自分自身を守ることを心がけています。
二つ目は「安定よりも変化を選ぶ」こと。毎年何か新しいことに取り組んで環境を変えることを意識しています。尊敬している先輩に「独立したら3年一区切りで考えなさい」と言われたことが胸に残っています。独立から4年目を迎え、これからの3年をどう過ごしていこうか模索しながら過ごしているところです。
将来のこと
あらためて、組織として動くこともしてみたいなと思っています。たまにチームでお仕事させていただくこともあるのですが、チームならではの良さや達成感もありますので、組織を作ったり入ったり、人を育てたりと、人と関わりながらの仕事も増やしていきたいです。
あとは二拠点生活をしてみたいという気持ちがあります。パートナーやクライアントさんとの縁があり、福岡の街が大好きになりました。自然と都会が一緒になっていて、人もすごくフレンドリーな良い街なんです。将来的には東京と福岡を行き来するような生活を漠然と妄想したりしています。
キャリア選択のリアル ー金子紗由美さんの場合
金子さん:
Webデザイナーの金子紗由美です。コーディングやホームページの文章のライティングなどもしています。生まれも育ちも神奈川県横浜市で、今年の2月でフリーランス3年目になりました。
仕事について
ホームページやLPなどのWeb制作を、ヒアリングからWordPressの構築まで基本的には全て一人で担当します。定期的なキャンペーンが発生するお客様の案件ではキャンペーンのバナー制作や、Instagramの広告制作などに派生することもありますし、その他にもパンフレット制作やサイト更新を担当することもあります。
お客様は医療関係、一般企業などさまざまです。リピートが多く、つながりが途切れないことはありがたいですね。「体調崩してない?」と気にかけてくれるお客様もいて、本当に恵まれているなと感じます。
働き方について
在宅ワークで、ずっと家で仕事をしています。稼働時間は週40時間を理想としています。ただ仕事が立て込むと、徹夜したり睡眠不足で連日働いてしまうこともあります。
これまでのキャリア
Webデザイナーは3つ目の仕事で、もともと和裁士をやっていました。
呉服店で売っている着物は手縫いが基本なので、縫って仕立てたり、成人式の着付けを担当したりしていました。ただやはり働き方も「職人」という感じだったので、一度は他の世界に出てみたいと思うようになりました。コツコツ仕事をすることは得意だと思っていたので、まずは事務職、またすぐに経験が積みたかったので仕事が決まりやすい派遣という形態で転職をしました。
1年間は派遣の範囲を出ない仕事をしていたのですが、社員さんの休職をきっかけに私がチームの中心メンバーになりました。自分から提案した案が採用されることもあって、やりがいを感じて楽しかったです。しかし契約期間は終了。次は正社員として責任のある仕事がしたいと考え始めました。
そのためにはスキルの習得が有利だと思い、2020年からデジタルハリウッドで勉強をスタート。卒業後はコロナ禍で求人数が減っていたため、雇用形態に関係なく興味のある仕事に応募していたところ、先に業務委託の仕事が決まりました。卒業後すぐフリーランスになることには抵抗があったのですが、せっかくいただいたご縁なので、それならプロとして覚悟を持って頑張ろうと決意し、独立することにしました。
大切にしていること
仕事も継続的にいただけるようになり、いつの間にかフリーランスとして2年が経ちました。なぜ継続できたのかというと、和裁士と事務職の経験が活きているからだと思います。
和裁士の、朝から晩まで地道に縫い続けるという経験はWeb制作にすごく活きていますね。幅広い世代の方と話す機会があったことや、和物や和柄への知識もデザインに役立っています。
それから、事務職で学んだコミュニケーション力と、「どんな環境でも頑張っていれば誰かが見てくれる。何より仕事って楽しい!」という学びは、とても大きいものでした。
独立して気づいたことは、物凄く経験値も実力もあるデザイナーじゃなくても意外とやっていけるということです。デザインやコーディングなどの実務ができることももちろん大事ですが、思った以上に「コミュニケーションがきちんと取れる人に依頼したい」というニーズがあるのかもしれないと感じました。言われたことをこなすだけでなく、痒いところに手が届く気遣いをすることも大切だと感じています。
それから特定の分野に強みがあることも役に立っているのかなと思います。私の場合は美容・医療・健康に偏っていますが、全般的に制作している人と何かに特化している人であれば、後者を選ぶクライアントも多いのではないでしょうか。
課題に感じていること
ありがたいことに仕事は順調に増え続けているのですが、このままいくといつかは一人で抱えきれなくなります。人に頼むのは苦手ですが、信頼できる頼れる仕事仲間を早めに見つけておいた方がよいと感じています。
また四六時中仕事のことを考えてしまうことも課題です。リフレッシュができないとパフォーマンスも下がります。意識的に仕事以外のことに集中できる時間を作りたいと考えているところです。
これからのこと
今いるお客様や周りにいる人を一番優先していきたいと考えています。事業を大きくするよりも、既存のお客様に迷惑をかけないことの方が、自分にとって大きいことだと感じるからです。
それから、直接人と会って話すことも大事にしたいです。メールだけで完結することも、実際に会って話すことで親近感や安心感が生まれ、仕事がもっとやりやすくなるのではないでしょうか。
健康を意識することも欠かせません。意識的に運動し、眼精疲労予防をして、きちんと寝ることは長く活動を続けるために大切だと考えています。
女性デザイナーの皆さんへメッセージ
お二人のストーリーをお話しいただいた後は「おすすめのツールやガジェット」「リフレッシュの仕方」など、女性デザイナー同士のざっくばらんなトークで盛り上がり、最後に皆さんへのメッセージの言葉をいただきました。
金子さん:
「目の前の仕事に必死で、一年先のことも考えられていないというのが正直なところです。それでも、その時の自分が最善だと思う選択を続けていれば、後になってもそんなに悪い結果にはならないのではと考えています。
ただ最善の選択をしようと思い詰めないことも大切だと思います。『納期があれば、明日の自分が頑張ってくれる』というなんとかなる精神も持ちつつ、気負いすぎずに今後も頑張っていく予定です。」
小松さん:
「ふんわりとデザイン業に足を踏み入れて、いつの間にか長い期間が経ってしまいました。その時その時で自分が楽しいと感じる方向に向かっていけば、『今ここにいたの?』という感じで前に進んでいけると思います。
がむしゃらにデザインに向き合った日々も楽しかったですし、今は全国のお客様と繋がってお仕事している日々が楽しいです。フットワークの軽さと気楽さを持ちながら、突き進む時は突き進むという感覚を大事にして、これからも頑張っていきます。」
おわりに
女性デザイナーの「キャリア選択のリアル」、感じていただけましたでしょうか? お二人とも計画的にキャリアを構築されてきたというよりも、その時々の感覚を大切にして、しなやかに道を切り開いておられる姿が素敵で印象的でした。
努力に裏付けされた自信や、周りの人を思いやる心があれば、どんな場所にいても大切にされて自由に人生を歩んでいける。そんな柔らかな強さが、キャリアについて悩んでおられる方のヒントになれば何よりです。
ランサーユニットコミュニティでは、他にもさまざまなテーマで勉強会やトークイベントを開催しています。こうした機会に参加されたいクリエイターの方は、ぜひランサーユニットへの登録を検討いただければ幸いです。