ランサーユニットを束ねる異色のリーダーが目指す、新たな人事戦略と多様性を享受する世界
こんにちは。LANCER UNIT(ランサーユニット)note編集部です。
プロのクリエイターを複数人選し継続的にクリエイティブ制作を発注できるランサーユニット。この事業を担うスタッフのインタビューをお届けします。
第2回は、デジタルハリウッド株式会社 執行役員、xWORKS事業部長である齊藤知也(さいとう ともや)さんの登場です。
ランサーユニットの指揮官である齊藤さんは、ワーケーションを敢行するなど、自らリモートワークの推進を体現されています。
ランサーユニットだけでなく、フリーランスと企業の在り方についての考察など、じっくりとお話を伺いました。
インタビューをさせていただいた私自身もフリーランス。とても興味深い時間となりました。ぜひたくさんの人に読んでいただきたいお話ですので、最後までお読みいただければうれしいです。
ー 齊藤さんは執行役員をされていますが、ランサーユニットではどういった役割を?
事業方針を決めて、それをメンバーと進めていく役割ですね。
執行役員という立場ですので、会社の資産をどうやってビジネスに変えていくか、ということがまず念頭にあります。資産を使って新規ビジネスを作り、それを運用してメリットを上げる。そういう仕事です。
デジタルハリウッドとしては、もちろん学校運営がメインストリームですが、私の仕事はその教育事業とは少し異なります。
学校教育のなかでスキルを体得した人材が育っていくと、入学した瞬間的な生徒数よりも卒業した人が圧倒的に多くなっていきます。すでに現在9万人以上。この人たちがすべて資産になるわけです。
この卒業生の資産をどうやって活かしていくか、そういった新規事業を考えてスタートアップさせるのが私の役割ですね。
ー 齊藤さんのデジタルハリウッド入社にはどんな背景があるのですか?
もともとは大手流通企業に勤めていて、新卒からずっと新規事業に携わっていました。ちょうど多角事業経営に舵を切った時期で、私の担当はスポーツクラブ、ゲームセンター、映画館など、エンターテインメント方面。そのなかで、デジタルコンテンツに対する魅力を強く感じた瞬間があったんです。
スポーツクラブってストイックじゃないですか。ひたすらバイクをこぐ、ひたすら走る。そうではなくて、スポーツクラブとゲームセンターを融合した、もっと楽しめる新しいカテゴリーができないかなと。
いろいろな経緯があって紹介していただいたのが、モーションキャプチャーを使うなど、当時CGで新しいメディアを作ろうとしていたデジタルハリウッドの関連企業でした。とても興味を引かれましたね。
そんなタイミングで人事の手伝いに借り出されました。たくさんの企業が集まる採用フェアだったのですが、なんとデジタルハリウッドがブースを出していたんですよ!それでこっそり話を聞きに(笑)
コンセプトを聞いて、ものすごく未来を感じました。将来もしかしたら、いや、これからの時代はこうなるんだと。在籍中の会社もおもしろい時期だったので迷いましたが思いきって転職を。
私のプレゼンテーションは「単純に学校事業を行なうだけではなく、学校という学びの場と、それに対する新しいビジネスを形づくっていけないだろうか」。そこを理解してもらえて、入社に至ったというのが背景です。
ー ランサーユニット発足にたどり着くまで、どのような思いが?
ビジネスよりも前に、社会的な問題への思いが強いですね。クリエイターの労働集約型をなくそう、という。
発注側上位主義というのは、もはや「クリエイター」ではありませんよね。クリエイターの地位向上といった課題を心から感じていました。
この数年、広報・ブランディングに対する社内体制を整えつつある企業は増えてきましたが、まだまだです。
詳しくは川村がすでに語っていますが、孫受け・子孫請けのような状態で、元受け1,000万円の案件が、末端では200万円の仕事に。クオリティギャップが大きすぎる、この構造を壊したいのです。
ましてや我々はクリエイターという人材を育成していますから、とても大きな問題です。
クオリティを上げるために、みんなで一緒にやりましょう!という社会を作りたい。それが、ランサーユニットを作った理由です。
ですので、直接契約を結ぶのはランサーユニットの絶対条件ですし、マッチングというより「フィッティングさせる」ことが我々の仕事だと思っています。
平等であり、かつ、パートナーである。そんな環境を目指しています。学校がやっている事業ですし、もっと人が夢を持てる、多様性を享受できるような世界にしていきたいですね。
ー クリエイターがフリーランスとして働くことについて、思うところをお聞かせいただけますか?
私としては、フリーランスというより「いち事業者」という捉え方をしたいと思っています。
例えば「インディペンデント・コントラクター」。海外では定着している存在で、解釈としては「相談できる人」です。企業が有意義な相談をできる人、スペシャリストと言ったらいいでしょうか。
フリーランスの働き方はさまざまです。単純な作業を大量にこなす仕事もあれば、「この人にしかできない」という仕事も。でも日本においては、どちらかと言うと前者が多いと感じています。
もちろんそれも必要な仕事ですし、我々もフィッティングします。ですが、フリーランスの「キャリア×スキル」に対して相談したい、そういった場面や環境を作りたい思いがあります。
例えば、もともと車の営業をやっていたプログラマー。掛け合わせによって事業フィットしやすいアルゴリズムにしたいんですよ。
デジタルハリウッド専門スクールに入学する人たちの多くは、過去にさまざまな仕事をしていました。そのなかでも、いったん仕事ができない環境に置かれた子育て中の女性などには、視座や目標の高い人が非常にたくさんいます。
自身の仕事のバックグラウンドや得意なもの、誰にも負けない好きなことなど、もっと引き出しを開けば人それぞれ持っているスキルは無数にあるじゃないですか。すごい技術や長い経験がなくても、制作スキルと「何か」を掛け合わせることによって、ある企業にとってはトレンドをキャッチアップしやすい人材になり得ると思います。
そういう組み合わせをどう作っていくか、を我々は重要視しています。
ー フリーランスの武器は、スキルだけではないということでしょうか?
もちろんです!
弊社は副業可なのですが、実は私、副業でWebデザインをしています。
フリーランスからすると「新しい社会を作ろうって言ってますけど、あなたたちサラリーマンですよね」という気持ちは当然あると思うんです。私たちの立場は分からないですよね、と(笑)
そこで重要に感じたのは、自分自身で「お金を稼ぐ」体験をすることでした。休日と夜を使って月に40時間程度ですが、いろいろなことを理解できました。
ただ普通にデザインだけしていたら、かなり苦労した案件もたくさんあったと思います。でも、私のクライアントとの関わり方は「一緒に解決しましょう」といったもので、単純な“発注者”と“請け負い者”という関係ではありませんでした。
「こういう形が成り立つんだ」という実感を得られました。逆に、それしかできなかったんですけど(笑)
「どういう目的で?」「目標の数字は?」そんな話から入るので、クライアントからするとデザインそのものよりも「Webを使ったソリューション」という意識になっていただいた気がします。この経験も大きいです。
フリーランスって、本当に大変ですよね。夢はあるけど、自分のやりたいことや思いを削らないと、収入につながらないわけで。
人生のなかで一時的にそんなことが必要な場合もありますが、技術よりも人と寄り添うこと、対話することを大切にするクリエイターがいるなら、我々の思いにきちんと関わってくれると感じています。
ー ありがとうございます。
そんな齊藤さんは、ワーケーションも敢行していらっしゃいますが、どういったきっかけで?
はい。キャンプ場でワーケーションを実行しました!
きっかけは、コロナ禍が発端となって私の部署がデスクをなくしたこと。我々は全国にいるクリエイターと東京の企業をつなげているので、ネットワーク上の打ち合わせなどは以前から行なっていましたし、どちらかというとリモートドリブンの意味合いが大きかったのですが。
「もっと社会をリモートベースで成り立つようにしていきたい」という使命感のようなものがありました。
でも家がオフィスになると、会社の仕事と副業の仕事を切り替えるのが難しいですよね。コワーキングスペースなどにも行ったのですが、当時はコロナ禍で長居ができず、うまくいきませんでした。
そこで、キャンプに行って仕事をするのはどうかと。2年前から始めたビギナーなんですけど(笑)
意外にもWi-Fiはつながるところが多く、電気は電源サイトを確保すれば解決できる。妻と一緒に「キャンプでワーケーションが成功するか!」というチャレンジをすることにしました。
妻もデジタルハリウッドの社員でしたが、退職してフリーランスになっていたことも理由のひとつでしたね。時間も場所も制約がないフリーランスの働き方を、自分自身で体感してみようと。
環境の楽しみ方にチャレンジしたかった気持ちもあります。リモートがこれだけ普及した時代ならではの、新しい環境作りを実践したかったんです。
先ほどお話しした「あなたたちサラリーマンだから」に対する「いや、自分たちも!」というテーマもありましたが(笑)
ー ランサーユニットを通して齊藤さんが考えている未来を教えてください
現状は我々も仲介業の枠内でコミュニケーションを取らなければいけませんが、将来的にはコミュニティマッチングになればと思っています。
企業が悩みを相談して、クリエイターが解決策を提案する。それがコミュニティベースで可能になり、ランサーユニットとしてのビジネスになる仕組みを作りたい。
「こんにちは!今入りました」「はじめまして!」と、企業とクリエイターたちが自由に名刺交換をするような。リアルな場でなくてもいいですよね。
企業が相談するとクリエイターたちが自ら動き、「それならチームを作ろうか。このチーム、どうですか?」「採用します!一緒にやりましょう」となるようなプラットフォーム。そうなったらすばらしいなと考えています。
今、我々はこの「コミュニティ」の勉強をしているんです。私も去年、コミュニティのスクールに行きました。自腹で(笑)
いろいろな関係性をお互いに作って、スキルを貸し借りするコミュニティを運営している団体があり、地域活性などにも貢献しています。彼らのノウハウ、コミュニティの作り方を学びました。
問題はコミュニティマネージャーをどう育てるか。人の良いところを引き出し、お互いに役立てるものを自然に重ねられる。そんなものができたらいいと考えています。とても難しいことですけどね。
ー ありがとうございました。
最後に、伝えたいメッセージがあればお願いします!
フリーランス活用に関して、届けたいメッセージがあります。
お互いにスキルを貸し借りでき、そのスキルが評価されてきちんとした対価が支払れる、そんな仕組み作りを提案したいと思っています。
正社員に傾倒する社会のなかで、事業をローンチさせられないで苦労している企業さまはたくさんいます。
フリーランス採用の仕組みをランサーユニットと一緒に作りませんか?
デジタルハリウッドに届いている求人は約6,000社ほどもありますが、そのほとんどの窓口は人事です。人事は正社員・契約社員採用がミッションで、フリーランスは事業ごとのプロジェクトということが多いんですが、これからは、人事そのものがフリーランスを含めた人材戦略を作っていかないと。
世の中にはすばらしいスペシャリストがいくらでも存在します。土日だけ動く人、社員たちが寝ている間に仕事をしてくれる人、企業にとって都合よく仕事をしてもらえる人たちがいます。
ランサーユニットを通じて、新しい組織戦略をぜひ提案させていただきたいと思っています。
いかがでしたでしょうか。
ランサーユニットを束ねているのは、なんとフリーランスを実践する執行役員でした!古い社会構造を壊し、みんなが幸せな新しい未来を築きたいと語る齊藤さんのお話にワクワクしました。
フリーランスを企業の人事戦略に組み込むという提案に興味を持ってくださる企業さまがいれば、ぜひランサーユニットにご相談ください!
新しい社会を一緒に目指しませんか?
取材・文/BBQ-john.inc 篠田由美子